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mRNAワクチンについて知っておこう

Author Archives: kanagawa-dc

mRNAワクチンについて知っておこう

こんにちは、金川歯科のかんです。

日本でもファイザー社製コロナウイルスワクチンの接種がはじまりました。

今回のファイザーのワクチンは、mRNAワクチンと呼ばれていますが、かなり先進的な技術で作られたものらしいです。

コロナウイルスワクチン(コミナティ筋注、BIONTECH & Pfizer)の適正使用ガイドを参考に、mRNAワクチンの仕組みについて解説していきたいと思います。

まず、mRNAってなに?

mRNAは、メッセンジャーRNAの略で、伝令RNAとも呼ばれます。

そもそも、RNA(リボ核酸ribonucleic acid)ですが、mRNA以外にも、tRNA、rRNA、二本鎖RNAなどさまざまな種類があり、最先端生物学・医学・薬学分野で特に注目されているそうです。

mRNAの役割を理解するために、家にあるパソコンに例えて説明してみましょう。

パソコンには記憶装置としてハードディスク(最近ではSSDが主流でしょうか)があって、そこにWindowsやMacOSなどのOSやワード・パワーポイントなどのソフト、スマホで撮った写真などのさまざまなデータが記録されています。そして、ハードディスクのデータの一部を外部に持ち出すときにはUSBメモリーなどにデータをコピーして、別のデバイスに移して動画を作ったり、スライドを作ったりもできます

我々の細胞も同じく、データ(遺伝情報)を持っており、それを核の中にあるDNA(デオキシリボ核酸deoxyribonucleic acid)に保存しています。ここには、生命の維持や増殖に必要なさまざまな種類のタンパク質RNAを作るための設計図のデータが記録されています。

DNAに記録されているタンパク質やRNAすべてのデータの内、必要な情報だけをメッセンジャーRNA(mRNA)にコピーし(転写transcription)、核の外の細胞質のなかにある小胞体というタンパク質工場に運ばれ、mRNAのデータを元にタンパク質を作るのです翻訳translation

家のパソコンに例えると、

細胞 = 家

細胞質 = 家の中

核 = パソコン

DNA  = ハードディスク

mRNA = USBメモリー

タンパク質 = USBメモリーにコピーしたデータで作成されたなんらかのコンテンツ

で理解すると概ねオッケーかと思います。

コロナウイルスの生き方

コロナウイルスは、RNAウイルスで、自分の遺伝情報をDNAではなくRNAに記録しています。

コロナウイルスの中には、RNAの遺伝情報しか入ってなく、それを元にタンパク質を合成したり、自己増殖したりするなどの高度なことは、宿主細胞のものを借りて行います。

具体的には、1)コロナウイルスがACE2というヒトの細胞表面のタンパク質に結合して、2)コロナウイルスが細胞膜を通過して細胞内に入り、3)自分の遺伝情報が入っているコロナウイルスのRNAを細胞質に放出します。その後、4)ウイルス増殖に必要なタンパク質を、ヒトの細胞内小器官(小胞体)を使って作り、5)新しいウイルス組み立てて、6)新たに完成したコロナウイルスが細胞外に出て、これらの過程を繰り返すことでどんどん増殖していきます。

(図1)コロナウイルス(SARS-CoV-2)の細胞への感染(コミナティ適正使用ガイドより)

mRNAワクチンの仕組み

今回接種がはじまったコロナウイルスのmRNAワクチンは、コロナウイルス抗原になるタンパク質の鋳型となるmRNAを脂質に包み、mRNAをヒトの細胞内に放出させて抗原を細胞内で作らせて(mRNAの翻訳とタンパク質合成)、免疫系にそれを渡して(抗原提示)、コロナウイルスに対する免疫を獲得させるものとなります。

(図2)mRNAワクチンの仕組み(コミナティ適正使用ガイドより)

ちょっと何が何だかわからなくなるので、まず「科捜研の女」を思い出してみましょう。

登場人物として、

1)細胞 = 科捜研

2)コロナウイルス = 犯人

3)コロナウイルスワクチンの脂質膜= 封筒

4)コロナウイルスワクチンのmRNA = 犯人に関する資料

5)抗原(コロナウイルスのタンパク質) = 科捜研が作成した犯人である証拠

6)免疫系 = 警察

に例えて解説してみましょう。

 

科捜研(細胞)に封筒(ワクチンの脂質膜)に厳重に封された犯人の資料(ワクチンのmRNA)が渡されます。

→それを元に、各種科学分析を行い、確固たる証拠を作成します。

→科捜研によって作成された証拠(抗原)を警察(獲得免疫系)に渡して、警察が犯人(コロナウイルス)を逮捕します。

いかがでしょうか。

このmRNAワクチンの仕組みを理解すると、分子生物学の基本的な知識を理解するにも役立ちます。

また学生時代に勉強した「DNA->mRNA->タンパク質」というDNAの二重らせん構造を解明したフランシス・クリックの「セントラルドグマ」を思い出しますね。

 

発癌性やmRNAの残留など、いろいろな不安もいわれていますが、なかなか面白いワクチンだなと思って、ワクチンの適正使用ガイドをみながら解説してみました。

ガイド的には、おそらく少なくとも9日以内にはmRNAが消失するため、mRNAが残存したり、我々のDNAに組み込まれたりする心配はないという見解ですね。

次のURLではmRNAワクチンに関する疑問について回答していますので参考までに

www.hosp.ncgm.go.jp/isc/vaccines/020/index.html

世界的にワクチン接種も普及して安全性も確認されてきているので、医療従事者として、そしてコロナウイルス蔓延の終息を願って早くワクチン接種を受けたいと思います。

それではまた!

 

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歯の接着の話

こんちには、金川歯科のかんです。

今回は歯の接着剤について解説したいと思います。

まず歯の構造から

歯は表面のエナメル質内層の象牙質の二層構造をしています。

エナメル質は90%以上ミネラル(無機質)でできており、ハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムの結晶でできた人体の組織の中で最も硬い組織です。

一方、象牙質は7割は無機成分からできていますが、残りの3割はタンパク質などの有機成分を含んでいます。無機成分はエナメル質と同じくハイドロキシアパタイト結晶でできています。そして象牙質の有機成分は、主にコラーゲンタンパク質で、構成成分としては骨に近いものがあります。

エナメル質は酸で溶かせばくっつく

エナメル質は、ほとんどが無機成分であり、酸で溶解する性質を持っています。なので、この酸による溶解を利用し、エナメル質表面を酸で処理して脱灰させてギザギザの面を形成し、そこに歯科材料を流し込んで固めれば、割と簡単に歯科材料がくっつきます。

(図1)リン酸処理によってエナメル質表面には凹凸面が形成される

具体的には、エナメル質表面に約40%のリン酸溶液を塗布すると(エッチングetching)、エナメル質表面には細かい凹凸ができます。そこに歯科用樹脂(レジン)を流し込んで固めると、エナメル質表面にレジンが嵌合し、はがれなくなります。

このように、エナメル質は簡単な酸処理で歯科材料の接着が得られますので、昔からこの仕組みを応用して歯科用樹脂をくっつけて使っていました。

象牙質表面には髪の毛がある?

一方、象牙質の場合、リン酸による表面処理を行なっても、エナメル質のようにレジンがあまりくっつかないです。

象牙質はコラーゲン線維をたくさん含んでいるので、リン酸で象牙質表面の無機質を脱灰しても、コラーゲン線維がぐちゃぐちゃになった髪の毛のように残るので、それが邪魔をして、レジンが表面に嵌合しないのです。

なので、まずコラーゲンとの親和性の良い親水性モノマーからできているプライマーを塗布し、その上にレジンとの親和性の良いボンディング剤を塗布して、プライマーとポンディングで処理された象牙質表面樹脂含浸層hybrid layer)にレジンをくっつける格好で象牙質への接着を獲得します。

(図2)プライマーとボンディング剤によって形成された樹脂含浸層(hybrid layer)のイメージ

象牙質への接着を得るためには2つの戦略がありますが、

1)ウェットボンディング:リン酸処理後、リン酸を水で洗い流し、水を乾燥させずに余剰な水分のみを拭き取り(ブロットドライ)、プライマーを塗布して、ボンディング剤を塗布する

2)セルフエッチングプライミング:リン酸処理は行わずに、酸性モノマーを含有するプライマー(セルフエッチングプライマーself-etching primer)を塗布することで、脱灰とともにプライミングをして、その上にボンディング剤を塗布する

セルフエッチングプライマーは日本ではじめて開発されたもので、日本の歯科臨床では、2)のセルフエッチングプライマーによる象牙質接着が主流になっていますし、実際、接着強さも簡単なやり方でしっかり得られる方法ですし、ウェットボンディングのように水を残さないのでレジンの重合阻害などの心配もありません。

象牙質表面を脱灰すると同時に、コラーゲン線維に染み込むセルフエッチングプライマーには親水性モノマーであるHEMAMDPなどの酸性モノマーが含有されています。

酸性モノマーであるMDPは、歯面以外にも、貴金属、シリカ系材料、ジルコニア系材料にも接着性を有するという報告があり、特に歯科用レジンとの接着が難しいとされていたジルコニアにも有効というところがありがたいですね。

 

今回は、歯の接着剤について解説しました。

歯でもエナメル質と象牙質でその組成の違いから、表面処理も変わってくることがわかりましたね。

特に象牙質のコラーゲン線維をどう処理するかで、象牙質表面への接着が決まることもわかりました。

歯の接着の話は、少し難しい内容かもしれませんが、勉強してみると面白い分野ですし、歯科にとってはかなり画期的なものなのです!

それではまた!

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細菌と仲良く暮らす!マイクロバイオームとは

こんにちは。

今回は、奥田克爾先生が書いた「デンタルプラークのすべて」という本を参考に、マイクロバイオームやプロバイオティックスの概念について解説していきます!

私たちと細菌の共生?

私たちのお口やお腹の中には、たくさんの細菌が住んでおり、巨大なコミュニティを形成しています。

歯周病、う蝕など、細菌は病原体としての認識がどうしても強いですが、実は、私たちは細菌たちと仲良く暮らしているのです。

遺伝情報の全体のことをゲノム(genome, gene + ome)、タンパク質の総体のことをプロテオーム(proteome, protein + ome)と呼んでいるように、私たちの体の中に住み着いている細菌などの微生物の総体のことを「マイクロバイオームmicrobiome」といいます。

この「マイクロバイオーム」の概念を理解することで、アレルギーや生活習慣病などのさまざまな疾病を解明しようとする研究が行われています。

マイクロバイオームとヒトが良い関係性を持っていれば、その人は健康であり、マイクロバイオームとあまり良い関係ができていないと、いろんな病気につながるらしいです。

特に、腸内マイクロバイオームは善玉菌、日和見菌、悪玉菌にわかれるんですが、悪玉菌(ウェルシュ菌・大腸菌・フィルムクテス菌)が優勢な人は、肥満、糖尿病、肌荒れ、アレルギー、認知症など健康が破綻するといわれており、腸内マイクロバイオームの破綻、つまり、悪玉菌優勢の「ディスバイオーシスdysbiosis」の状態になっているんです。

逆に、善玉菌が優勢なマイクロバイオームを構築することで、体の健康を整えることができると期待されています。ヨーグルトのCMなどでよく耳にする乳酸菌、ビフィズス菌が善玉菌の代表です。

善玉菌の働き

我々の腸内マイクロバイオームのうち、善玉菌として知られているのが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、そしてやせ菌として知られるバクテロイデス属があります。

善玉菌の役割を知るために、まず、セロトニンについて知っておきましょう。

セロトニン」は脳内における神経伝達物質で、脳の最適な覚醒状態、心のバランス、自律神経のバランスを整える働きをし、「幸せホルモン」とも呼ばれています。

セロトニンを産生するためには、ビタミンB6という栄養素が必要ですが、私たちは、ビタミンB6を合成するための酵素を持っていないので、自力ではビタミンB6を合成することができません。どうやってビタミンB6を作るかと言うと、腸内細菌の酵素の力を借りて作るのです。

善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌は、腸内環境をちょうど良いpHにすることで、ビタミンB6の合成を活性化し、結果的にセロトニンの合成を活性化することで、心や自律神経のバランスを整えてくれます。

また、善玉菌によって調整された弱酸性の腸内pH環境は、セロトニン合成活性だけでなく、免疫細胞を刺激することで、免疫力をアップさせ、かぜやがん、アレルギーに強い体質にしてくれといわれています。

まとめると、善玉菌優勢のマイクロバイオームは、

1)セロトニン合成を活性化することで、脳機能を活性化する

2)免疫細胞を刺激することで、免疫力をアップする

といった働きがあるそうです!

どうすれば善玉菌を定着させる?

乳酸桿菌やビフィズス菌などの善玉菌を優勢にして、私たちのマイクロバイオームをいい方向に持っていければ、体の健康につながります。

実際、乳酸菌やビフィズス菌などが入っているヨーグルト製品がたくさん市販されており、そういったヨーグルトを食べることで、善玉菌も一緒に腸管内に送り込まれ、善玉菌優勢の良好なマイクロバイオームを作ることが期待されます。

このように、善玉菌を直接腸内に送り込んで定着させる戦略を「プロバイオティクスprobiotics」といいます。

一方、オリゴ糖や食物繊維など、腸内に定着している乳酸菌の増殖や活性化を促す食べ物を食べることで良好なマイクロバイオームを形成する戦略を「プレバイオティクスprebiotics」といいます。

お口の中のマイクロバイオームをよくして、お口の健康を守る!

マイクロバイオームの概念を理解していれば、病気と戦う戦略の幅が広がることがわかりました。

歯科でも、お口の良好なマイクロバイオームを構築することで、う蝕や歯周病などのお口の悩みを解決する動きが活発に出てきています。

特に、以前から「ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)」が注目されていますが、ロイテリ菌は、食中毒の原因菌やロタウイルス(小児の胃腸炎の原因)を攻撃してくれるといわれていますし、免疫に働きかけて炎症性物質の産生を抑えることでアレルギーを防ぐことも報告され、プロバイオティクスでも特に注目されている善玉菌です。

実際、歯科でも、ロイテリ菌のヨーグルトやタブレットを摂取することで、虫歯菌(Streptococcus mutans)や歯周病原菌(Porphyromonas gingivalis)の減少がみられたという研究結果が出てきているそうです。

以前のような細菌と戦う「アンチバイオティクスanti+biotics」ではなく、細菌と共存する「プロバイオティクスpro+biotics」が病気を克服する新しい戦略なのです!

 

今回は、マイクロバイオームの概念について解説しました。

私たちの味方の細菌を増やすことで、体の健康が保たれるということがわかりましたね!

それではまたです!

 

 

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YouTubeはじめました!4K映像でみる根管治療など!

金川歯科のかんです。

4K画質で撮影したマイクロスコープ映像を随時YouTubeにアップしています!

現在は歯髄保存療法や根管治療を中心とした映像をアップして、実際どういう風にやっているかをみなさんにお見せしたいと思います。

今後は歯磨き指導などの患者向け保健教育動画など、根管治療以外の動画もアップしていけたらと思います!

チャンネル登録

もぜひお願いします!

https://www.youtube.com/channel/UCqh35eL1R-9KeyyimJ3d2bg

https://youtu.be/3_IxfLT0OzY

https://youtu.be/28bVzqsRdjA

 

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歯磨き粉ってどれを使えば良い?歯周病編

こんちには、かんです。

記録的大雪の影響がまだ続いていますね。大変です。

前回の虫歯予防に特化した歯磨き粉につづき、今回は歯周病予防のために有効な歯磨き粉について調べてみましょう。

まず、歯周組織とは?

歯周組織は、文字通り、歯の周りの組織のことで、歯を支えている組織です。

木が土の中に根を張ってしっかり立っているように、顎骨の中に歯の歯根が植っています。

しかし、顎骨に歯根がただ植っているだけでは、歯は顎骨から簡単に抜けてしまいます。

噛む力がかかっても歯が骨から抜けないように、歯と骨の間で、しっかり歯を支えているのが「歯周組織」です。

具体的に歯周組織は、1)歯肉、2)セメント質、3)歯根膜、4)歯槽骨によって構成されています。

(写真1)歯周組織のレントゲン象。レントゲン上で、セメント質や歯槽骨は硬いので白く、柔らかい歯根膜は黒く写ります。

歯肉はいわゆる歯茎のことで、上皮組織です。

セメント質は歯根の象牙質表面についている硬組織で、ここに後述の歯根膜が入り込みます。

歯根膜は、セメント質と歯槽骨の間に規則的に配列されているコラーゲンを主成分とする線維性の組織です。歯根膜は歯のクッション材のようなもので、噛む力を緩衝してくれますし、噛むときの感覚を司ります。

歯槽骨は、歯が植っている顎骨の部分をいいます。

歯周病について

歯周病は、歯についたプラークという細菌の塊によって歯周組織に炎症が引き起こされ、歯周組織が破壊される病気で、その原因は歯周病原菌による細菌感染です。

最初は、歯肉の炎症による発赤・腫脹・出血からはじまりますが、放置すると歯根膜や歯槽骨が破壊されることになります。

(写真2)歯周病によって破壊された歯周組織。歯槽骨が破壊されたところは、レントゲン写真上で黒く写ります。

一度破壊された歯根膜や歯槽骨はなかなか再生しません。

さらに、歯周病は、歯を失う最大の原因になることはもちろん、糖尿病や心臓病など、全身に影響を及ぼす恐ろしい病気ですので、なる前に予防することがとても大切です。

歯周病予防に必要な歯磨き粉成分は?

(図1)歯周病予防に有効な成分(LION資料より)

ライオンのシステマシリーズの資料を中心に説明していきますが、

歯周病予防の戦略としては、1)歯周病原菌の殺菌、2)歯肉を歯周病から強くする、3)歯肉の炎症を抑えるといった感じです。

1)殺菌成分:IPMP(イソプロピルメチルフェノール)CPC(塩化セチルピリジニウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム

2)歯肉細胞の活性化・歯肉強化:ビタミンE

3)歯肉の炎症抑制:トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、βグリチルレチン酸

特に、IPMPは、バイオフィルムでお薬に対する耐性ができてしまった場合にも効果があるといわれています。

(図2)IPMPはバイオフィルム浸透性があるといわれています。(LION資料より)

また、歯肉の炎症によって歯肉が出血しやすい状態になると、歯周病原菌が増えやすくなるので、トラネキサム酸などで炎症を抑えて出血しにくい歯肉にすることも大切です。

その他に、粘度があって歯に留まりやすい性状が必要です。薬用成分が歯に長く残存してくれることで、薬効の持続が期待できます。また、研磨剤が入っていると歯がすり減りやすいので、特に歯周病で歯肉が下がって歯根が見えている方は、研磨剤が入っていないことが推奨されます。

(図3)システマSP-Tジェル、歯周病リスクの高い方に特に有効です(LION資料より)

システマシリーズの中でも、「SP-Tジェル」が歯周病予防のための薬用成分がしっかり配合されていて、研磨剤無配合・高粘性なので、特に歯周病のリスクが高い方にオススメの歯磨き粉です。

以上、歯周病予防のために有効な歯磨き粉について書いてみました。

正しい歯ブラシと歯磨き粉の使用で、歯周病の予防はもちろん、すでに進んでしまった歯周病の進行を止めることもできます。

みなさんで歯ブラシを頑張りましょう!

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臨時休診のお知らせ

令和3年1月12日(火)は、大雪の影響により、臨時休診とさせていただきます。

 

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歯磨き粉ってどれを使えば良い?虫歯&知覚過敏編

こんにちは、かんです。

まず、遅くなりますが、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新年一発目になりますが、今回はライオンさんの歯磨き粉成分をみながら、患者様それぞれに合った歯磨き粉選びに役に立つ情報について書いてみます。

虫歯型か歯周病型か

まず、歯科の2大疾患は、みなさんご存知の虫歯と歯周病ですが、虫歯と歯周病でそれぞれ求められる薬用成分が異なってきます。

この記事では簡単に1)虫歯体質の患者様向け2)歯周病体質の患者様向けに分けて、それぞれに必要な歯磨き粉成分について解説します。

今回はまず虫歯型の患者様向けの歯磨き粉について書いていきます。その延長で、象牙質知覚過敏に有効な歯磨き粉についても記載します。

フッ素で虫歯に強い歯にする

まず、虫歯型の方に必要な成分は、フッ素(フッ化ナトリウム)です。

虫歯というのは、簡単に説明すると、Streptococcus mutans(ミュータンス菌)という細菌が、砂糖を代謝してできた酸によって歯が侵される病気です。

フッ素を使う目的は、ミュータンス菌による酸の攻撃に強い歯にすることです。

どのように酸に強い歯にしてくれるかというと、ハイドロキシアパタイトという結晶からできているエナメル質や象牙質の表面にフッ素が塗布されることで、ハイドロキシアパタイトが一部フルオロアパタイトという結晶にかわって、酸の攻撃に強くなる仕組みです。

濃度が高ければ高いほど、フッ素の効果が発揮できますが、濃度が高いとフッ素の毒性も出てくるので、家庭用の歯磨き粉としては許容されている濃度は日本では最大1,500ppm(実際販売されているのは最大1,450ppm)になります。

また、実際フッ素を塗っても、お口の中では唾液によってすぐに流されるか薄まるので、フッ素の効果を高めるには、できるだけフッ素を歯の表面に留めさせる必要があるので、「コーティング成分」が入っているものがあります。

まとめると、虫歯型の方に有効な薬用成分は

1)フッ素:フッ化ナトリウム(できれば1,450ppmのもの)

2)コーティング剤:カチオン化セルロース(ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、PCA(ピロリドンカルボン酸)

があります。

(図1)フッ素入りのLIONチェックアップシリーズ(LION資料より)

LIONの虫歯用歯磨剤であるチェックアップのライナップです。

子供から成人まで、それぞれのライフステージに合わせた薬用成分が配合されています。

(図2)歯磨き粉使用後の唾液中フッ素濃度の経過(LION資料より)

歯磨き粉のフッ素成分は、お口の中ですぐ薄まってしまうので、できれば高濃度のものを使った方が良いでしょう。

歯がしみるときには何がいい?

冷たいものや歯ブラシのとき、歯がしみる、つまり、象牙質知覚過敏に有効な歯磨き粉はどれでしょうか?

CMでもよくやっているシュミテクトが、知覚過敏用歯磨剤として有名かと思います。

まず、象牙質知覚過敏とは、歯の表面のエナメル歯が剥がれ、内層である象牙質が露出することで冷温刺激や歯ブラシなどの擦過刺激でしみる状態をいいます。

特に、歯と歯茎の境目である歯頸部のエナメル質は非常に薄く、研磨剤入り歯磨き粉の使用などですり減りやすく、簡単に象牙質が露出してしまうことがあります。

(写真1)歯頸部のエナメル質はとても薄いので研磨剤入り歯磨き粉の使用で容易にすり減ってなくなってしまい、象牙質が露出してしまい、う蝕や知覚過敏になりやすくなります。

このように露出してしまった象牙質は、感覚があるので、とてもしみるようになることがあります。(象牙質知覚過敏)

象牙質の感覚は、外来刺激が、象牙質にたくさん空いている穴(象牙細管)を通して歯髄の神経に伝わることで感じます。シュミテクトなどのしみ留め成分の歯磨き粉は、象牙細管を封鎖する成分(硝酸カリウム)を含有しています。

しかし、市販のもののほとんどには研磨剤が入っていますので、露出してしまった象牙質にそれを継続して使うと余計に象牙質がすり減ってしまい、知覚過敏が悪化する場合もあります。なので、知覚過敏用の歯磨き粉は、できれば研磨剤無配合のものが望ましいです。

特に、ライオンさんのチェックアップシリーズの内、「チェックアップルートケア」が象牙質知覚過敏用としては理にかなっている成分構成かと思います。

(図3)LIONのチェックアップルートケア、研磨剤が入っていないのでオススメ(LION資料より)

知覚過敏抑制成分の硝酸カリウムはもちろん、研磨剤が入っていませんし、フッ素濃度も高濃度に入っているので、露出した象牙質の虫歯予防にも有効です。

チェックアップシリーズは、基本的には歯科医院専売品で、普通の薬局には置いてないので、かかりつけの歯医者で買い求める必要があります。

 

今回はまず虫歯体質の方向けの歯磨き粉に必要な成分を解説してみました。

次回は、歯周病体質の方向けの歯磨き粉についてまとめてみます。

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深い虫歯から歯の神経を守る!その2

こんにちは、かんです。

今回は、前回の記事(間接覆髄法)の続きで、間接覆髄法より積極的な歯髄保存療法について説明していきます。

歯髄の露出を恐れず

前回の記事では、歯髄に非常に近い深い虫歯(深在性う蝕)に対して、できるだけ歯髄が露出しないように、虫歯を段階的に取るか、少し虫歯を残して封じ込めるかにして、歯髄を守る治療について説明しました。

今日説明する治療法は、歯髄が露出してでも確実に虫歯を取って、虫歯を取ることによって露出してしまった歯髄をできるだけ温存する治療になります。

考え方としては、まず

1)マイクロスコープの拡大視野による感染源の確実な除去

2)封鎖性・生体親和性・抗菌作用・硬組織誘導能といったMTA(Mineral Trioxide Aggregate)の優れた材料学的特性を活用した歯髄の保護

虫歯の除去によって歯髄が露出してしまっても、MTAで歯髄を保護できますので、虫歯を下手に残すより、露髄を恐れずに感染源を確実にとることを重視します。場合によっては、歯髄も一部切断して、より確実に感染源を除去します。

MTAを使う前に虫歯をきれいに!

MTAのおかげで、露出した歯髄も、安心して残すことができるようになりました。高い封鎖性によって細菌の歯髄への漏洩から守ってくれますし、歯髄に接していても生体親和性が高いので安全です。

そして、MTAの硬化時に作られる水酸化カルシウムは、強アルカリ性による抗菌作用はもちろん、歯の組織(象牙質)の形成を誘導する能力があると知られています。

(写真1)露出した歯髄はMTAで保護する!

しかし、MTAを魔法の薬のように思い込み、MTAの性能だけを信じて、歯髄保存療法を行うと必ず失敗に終わってしまいます。

まず歯髄保存療法成功の大前提は、「虫歯の徹底除去」、つまり「感染源の確実な除去」です。

特に、外傷とかではなく、う蝕が原因で歯髄が露出してしまった場合は、感染源の徹底除去はかなりシビアになってきます。

虫歯の徹底除去」を達成するためには、マイクロスコープの拡大視野が不可欠です。マイクロスコープの拡大視野下で、う蝕検知液による染め出し歯の硬さなどを目安に、う蝕を取り除いていきます。

また、う蝕除去時の削片などが歯髄に残ってしまうと、歯髄に炎症を起こしてしまいますし、すでに歯髄がダメージを受けて一部壊死してしまっているときもあるので、そのときもマイクロスコープの拡大視野がないといけません。

この作業が歯髄保存療法において最も大切であり、「どこまでが虫歯なのか」「歯髄は元気なのか」と、術者を迷わせるところでもありますので、かなりの熟練度を要するパートです。

(写真2)マイクロスコープによるう蝕視診、先端の尖った器具で強く当ててみて、歯に圧痕がつかなければ健全歯質と判断しています。

(写真3)マイクロスコープによる歯髄視診、歯髄に血流があっても、エアーをかけたときに歯髄が象牙質から容易に剥がれるような場合は、歯髄壊死と判断しています。

このように、マイクロスコープの拡大視野は、歯髄保存療法において欠かせないものです。

しかし、う蝕除去や歯髄の状態の判断は、国際的に認められたような判定基準がまだ確立していない感じで、かなり曖昧で主観的な判断要素がありますので、そこが治療における難点かと思います。

いずれにしても、いきなり根管治療を行わずに、まずはステップバイステップで、歯髄保存療法を行うことは、価値のある選択肢かと思います。

最近は虫歯の人がほとんどいないと言われていますが、虫歯の罹患状態も二極化しています。「虫歯が無い人は全くないし、ある人はかなり重篤(虫歯が多いし、深い)」といった感じですね。

深い虫歯で悩んでいる方は、ぜひ歯髄保存療法に熱心な先生に出会えることを祈ります。

今日は以上とさせていただきます!

 

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年末年始の休診について


年末年始休診期間
12月28日(月)午後~1月3日(日)

28日(月)午前は通常通り9:00~13:00まで診察しております

期間中はご不便ご迷惑をおかけ致しますが、何卒ご了承くださいますよう お願い申し上げます。

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深い虫歯から歯の神経を守る!その1

こんにちは、かんです。

前回の歯髄の話の続きとして、深い虫歯(深在性う蝕)に対する治療について書いていきたいと思います。

「根管治療をなんとか避けたい」

まず、深い虫歯というと非常に曖昧な表現ですが、

深いというのは、虫歯でエナメル質が壊され、歯の第二層である象牙質の厚みのほとんどの深さまで虫歯になり、歯の中にある歯髄に接近もしくは到達している状態をいいます。(簡単にいうと、歯髄に近い虫歯)

(写真1)歯髄の近くまで虫歯が進行している。

虫歯が歯髄に接近すると、虫歯の細菌などの感染源が象牙細管を通して歯髄に直接入っていくことができ、それによって歯髄炎がひき起こされます。

深在性う蝕によって歯髄炎が重篤で、歯の激痛だったり、歯髄が壊死を起こしてしまっている状態であれば、迷わず歯髄を全て取り除く治療を選択しますが、そうでないときは、「虫歯がすごく深くて歯髄まで行ってそうだけど、歯髄を全部取る以外の方法は無いかな」という迷いが出てきます。

歯髄を全て取り除く、つまり根管治療を行ってしまうと、虫歯の再発はもちろん、歯根破折のリスクの増大という問題が出てきます。

虫歯の治療の中で、根管治療は最も侵襲の大きい治療であり、どうしても歯へのダメージが大きいので、なんとか歯髄を残してあげたいという治療(歯髄保存療法vital pulp therapy)が以前から行われてきました。

ただ、歯髄活性の高い若年者の、特に外傷歯に対する治療として主に行われており、成人の深在性う蝕に対する治療としては、その予後の不安定さから主流の治療とはいえませんでした。

しかし、マイクロスコープの拡大視野を活用することで、虫歯や歯髄の状態を細かいレベルまで把握することができるようになったことから、最近では、大人の深在性う蝕に対する治療としても注目されるようになりました。

さらに、歯髄への生体親和性が高いMTAという歯科セメントが歯髄を保護する材料として活躍しており、歯髄保存療法の予後に大きく貢献しています。

歯髄保存療法その1:歯髄を露出させない

深在性う蝕に対する歯髄保存療法のコンセプトとして、まず「歯髄を露出させない」治療があり、手技として

1)ステップワイズエキスカベーションstepwise excavation

2)シールドレストレーションsealed restoration

があります。

まず、ステップワイズエキスカベーションですが、stepwiseというのは「一歩ずつ、段階的に」という意味で、虫歯を2段階もしくは3段階以上のステップを踏んで取り除く手技です。

ステップワイズエキスカベーションは、虫歯が歯髄にほぼ到達しており、「歯髄真上の虫歯」を全て取り除くと歯髄が見えてしまうような状態に行いますが、手順として1)「歯髄真上の虫歯」は少し残して、それ以外の虫歯は全て取り除いて、お薬(水酸化カルシウムなどの覆髄剤)を置いて仮のもので虫歯の穴を封鎖しておいて、2)3〜6ヶ月間う蝕象牙質の硬化や第三象牙質の形成を待ってから、3)再度開けて(リエントリー re-entry)、残りのう蝕象牙質を取り除くという流れで、かなりの辛抱強さを必要とする治療です。

(写真2)「歯髄真上の虫歯」とはこんな状態です。歯髄が露出する寸前です。

一方、シールドレストレーションですが、sealedというのは「封鎖された」という意味で、「歯髄真上の虫歯を封じ込めてしまう」イメージです。

ステップワイズエキスカベーションのような歯髄真上の虫歯に覆髄剤を置いて象牙質形成を待つプロセスを省いて、歯髄真上の虫歯以外はしっかり取り除いて、虫歯があった穴をつめて封鎖してしまいます。歯髄真上の虫歯を封じ込めることで、虫歯菌への栄養などを遮断して虫歯の成長を止めさせるという意味合いを持っています。ステップワイズエキスカベーションと違って、治療回数は減りますが、虫歯を少なからず残すという特徴があります。

両者の共通点としては、「歯髄を露出させない」というところにあります。

歯髄が露出することによる直接的なダメージを極力避け、歯髄の生活力を生かす治療です。

また、このような歯髄保存療法を、お薬が直接的に歯髄に接するわけではなく、一層の象牙質を介して歯髄を保護することで、間接覆髄法indirect pulp cappingという表現をすることもあります。

本日はここまでにして、次はもっと積極的な歯髄保存療法について書いてみます!

 

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